脳動脈瘤の新しい治療法をご存知ですか?
脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血という脳卒中をきたす病気です。
ひとたび破裂すると社会復帰率は20-30%しかないと報告されており、予防治療を行う機会が増えています。
従来は開頭手術がスタンダードでしたが、当院では出来るだけ体にやさしい血管内治療を行なっています。
通常は動脈瘤の中にコイルを入れて詰める治療を行いますが、治療が行いにくいケースもあります。
コイル塞栓の補助として、ステントという金属メッシュの筒が使われていますが、
治療後の再発が問題となる場合があります。このため最近、いくつかの新しい機器が開発されてきました。
その一つが、メッシュの目の細かいフローダイバーター、そして特殊な形状のパルスライダーなどですが、
これらの機器は脳血管内治療の経験が豊富な限定された医師しか使用することができません。
兵庫医科大学の吉村紳一教授は日本でも有数の治療医です。
先生のこれまでの脳神経外科手術は4,000件以上、同院の年間脳動脈瘤治療数は約200件と全国トップレベルで、
日本全国から多くの患者さんが治療を求めて来院されています。
TOPICS
〜最新の治療〜
-
新しいフローダイバーターの導入
フローダイバーターは目の細かいメッシュの筒で、図のように動脈瘤のある血管に留置するだけで、動脈瘤が縮んでいく新しい治療です。
また、この機器は治療後の再発が少ないという大きな利点があります
当院では新しいフローダイバーター(FRED, テルモ社)が使用可能となり、5mm以上の動脈瘤が治療できるようになりました。
内頚動脈以外の血管にも適応が可能です。
より多くの患者さんが、フローダイバーター治療を受けられるようになりました。今までこの治療が受けられなかった方も、当院に一度お問い合わせください。-
フローダイバーター(FRED, テルモ社) -
動脈瘤には何も入れず
血管に留置するだけで治癒する
-
-
新機器パルスライダーの導入
パルスライダー (ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 )は血管の分かれ目にできた動脈瘤用に開発された新しい機器です。
これまでこういった動脈瘤には複数のステントを使用せざるを得ないことが多く、治療後の血栓症が多くなるという問題がありました。
パルスライダーで治療した場合には、治療後の内服薬が早く減量・中止できる可能性があります。
当院ではこのパルスライダーが8月から使用可能となる予定です。
これまで血管内治療が行いにくいと判断された方も、一度お問い合わせください。-
パルスライダー
(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 )
-
脳の病気

未破裂脳動脈瘤
未破裂動脈瘤は症状のないことがほとんどです。まれに動脈瘤が脳神経を圧迫して症状を出すこともありますが、一般的には無症状で、検査をしないと動脈瘤は見つからないということを知ってください。では脳動脈瘤は年間何パーセントぐらいの確率で破裂するのでしょうか?通常は、年間0.5%から1%ぐらいです。ただし、動脈瘤が大きいほど破裂率は高くなりますし、経過観察中に増大した場合には極めて破裂率が高いことがわかってきました。また、破裂しやすい場所(前交通動脈や内頚動脈-後交通動脈分岐部など)や破裂しやすい形(いびつな形、コブにさらに小さなコブができている場合)もあります。

脳梗塞
顔面の左右差、上肢麻痺(片方の手が上がらない、下がる)、言葉が話しにくい、などが代表的な症状です。ただし、他にも半身のしびれや目の見にくさ、物が二重に見えるなど様々な症状が出ます。脳梗塞を起こした場合にはこういった症状が続くことが多いのですが、一旦症状が出て、すぐに戻ってしまうことがあります。症状が戻るため安心しがちですが、この一時的な症状は一過性脳虚血発作(TIA: transient ischemic attack)と呼ばれており、脳梗塞の前触れであることが多いため注意が必要です。

もやもや病
脳の血流が足りなくなることによる脳梗塞と、もやもや血管が破綻することによる脳出血で発症します。子どもの場合は脳梗塞が多く、成人では脳梗塞と脳出血が半々程度に起きるとされています。症状としては、突然の半身麻痺や言語障害、知覚異常、視野異常、てんかんなどがあります。また、もやもや病の発作は、過呼吸で誘発されることで有名です。たとえば泣いた時や大声を出した時、ラーメンなどをふうふうと吹いたり、笛などの吹奏楽器の演奏、激しい運動後などに発作を起こします。これは過呼吸で血液中の二酸化炭素濃度が低下して脳の動脈が縮み、脳血流が減少するためです。発作を繰り返す場合には脳梗塞になる可能性が高いので専門医の診察が必要です。

頚動脈狭窄症
頚動脈狭窄症自体では症状はありませんが、狭窄が原因となって脳梗塞を起こすと、半身マヒや言語障害などを生じます。頚動脈狭窄症は過去に発作を起こしたことがあるかどうかで、その後の発作率が大きく違います。過去に発作がなく検査で偶然見つかった場合は「無症候性病変」と診断され、脳梗塞を起こす確率は年間2%程度と報告されています。一方、過去に脳梗塞や一時的な発作(一過性脳虚血発作)を起こした場合には「症候性病変」と診断され、内服治療を受けても、年間13%という高い確率で再発作を起こすことが知られています。

くも膜下出血
突然の激しい頭痛(これまで経験したことがないような頭痛、ハンマーで殴られたような頭痛)が典型的な症状です。ただし軽症の場合には軽い頭痛のこともありますし、逆に重症例では頭痛を訴える間もなく突然倒れてしまうこともあります。また、脳内血腫を合併する症例では半身麻痺を合併することがあります。

脳出血
脳出血は、脳内の細い血管が切れて出血する病気です。高血圧で起きる脳卒中として有名です。出血した脳の場所によって症状は違いますが、突然の半身麻痺(片麻痺)や失語症(言語障害)が典型的な症状です。ただし重症例では突然意識を失ってしまいます。脳出血によって起きた障害は後遺症になることが多いので、予防が最も重要と言われています。

脳動静脈奇形
最も多いのは出血です。脳出血やくも膜下出血を起こした場合には、MRI、MRAや脳血管撮影などの検査を受けて診断されます。 一方、けいれん発作や頭痛発作の精密検査で診断されることもあります。出血すると突然の激しい頭痛や吐き気、嘔吐を来たします。脳内出血の場合には、その場所に応じて、半身麻痺や言語障害、視野異常などが起きます。また、重症例では意識を失ってしまいます。

海綿状血管腫
最近はCTやMRIで無症状のものが見つかることが多くなりましたが、出血やてんかん発作を起こして見つかることもあります。また、出血を繰り返すと血管腫の周辺に出血が溜まって袋のようになり、脳の圧迫による麻痺や言語障害が出ることがあります。